けんみん文化祭ひろしま’09文芸祭合同大会
トップページ 事業概要 けんみん文化祭ひろしま・文芸祭合同大会 入賞・入選作品発表 【短歌】山本敏治 選

【短歌】山本敏治 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
酸性雨水質汚濁砂漠化は言葉の出ない地球の叫び 県立総合技術高等学校一年 宮森 俊樹
【評】地球上に生息する生物への問題点に着眼し、かなしく、強く訴えてある。「地球の叫び」は心を濃縮した表現で妙。
青々と茂る緑をかけぬける春一番よ獣のごとく 盈進中学校二年 古屋 映実
【評】風には実体はないが、春一番を「獣のごとく」と、形あるもののように捉えた空想からの発想は、真にピッタリ。
原爆の記憶薄れる今現代語り継ぐのは三世の私 県立総合技術高等学校二年 太田 智子
【評】原爆の悲惨を語り継ぐ人は激減。あの悲惨を後世に伝え続けなければならぬと決意する三世の作者。読者の心を打つ。
つき抜ける空に向かってまっすぐと背すじを伸ばす稲の整列 呉市立仁方中学校三年 相原いづみ
【評】初夏の稲のみどりが伸び立つ田園の景。無限の可能性を秘めているような未来とエネルギーを想わせて清々しい。
わっはっはー毎日笑顔が満開だ空を見上げる向日葵のように 県立総合技術高等学校一年 中司 実奈
【評】豪快な笑いをする時の大きな口と向日葵は同じ形。相方のつよさと明るさを重ね合わせた直感的な表現は爽快。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
音は汗トランペットの指にたこきっとかちとる全国大会 比治山中学校三年 冨士 愛珠
厳しさの裏にかくれた優しさに気づいて思う父母の愛 尾道市立御調中学校二年 後藤  歩
辛い時支えてくれる友達の笑顔と一言ただそれだけで 県立総合技術高等学校二年 平岡 莉乃
くり返す試験の度の”次こそは”もうあとわずか残された”次” 県立忠海高等学校三年 西原 実香
美しく風に揺らされ闇照らし儚く散り逝く閃光花火 銀河学院中学校三年 岸本 美穂
凛とした君の背中が眩しくて背伸びしていた初恋の春 県立久井高等学校三年 井上 裕美
ありがとうたった五文字の一言で伝わるものは心にのこる 県立総合技術高等学校一年 蒲原 菜未
終わらない宿題という名の危険物処理するのには時間がかかる 県立総合技術高等学校二年 三好厚太郎
シャーペンと消しゴム一つでいざ出陣入試という名の本丸へと 県立総合技術高等学校二年 嶋田  聖
「本当に負けてしまった」風景のすべてが止まり夏が終わった 三原市立宮浦中学校三年 宮本 健史
8月の空に響く鐘の音に帰らぬ人を思う祖母の涙 県立総合技術高等学校二年 赤尾未奈子
母親の「無理はするな」の一言の次の言葉は「全国出てね」 如水館高等学校三年 沖田 涼太
(あし)を持ち(かみ)が生えてる熊野筆受け継ぐヒトと同じ風貌 熊野町立熊野中学校一年 原  直人
熊野筆歴史をきざむ筆作り世界で一つぼくだけの筆 熊野町立熊野中学校一年 橋 健太
寂しさを空き缶の如く踏み潰す踏んだ分だけ辛くなるんだ 如水館高等学校三年 尾美 晴香
授業中机という名のキャンパスに一つの小さな世界が生まれる 呉市立呉中央中学校二年 山根 鈴実
遊びすぎ課題が残る夏終わり追いたてているツクツクボウシ 比治山女子中学校三年 友田 依里
かきごおりみつがたっぷりいいにおいわたしのほっぺおちていきそう 庄原市立口北小学校一年 いわたきゆう
セミたちがミンミンミンミン鳴いているつたわってくるまなつのあつさ 銀河学院中学校三年 原岡 恵里
仁方中のあせたゼッケンしょって立ち深く礼する最後の畳 呉市立仁方中学校三年 長島 朝子

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
兄征きし前夜の青き蚊張の中父の煙管は夜半まで蛍火 広島市 出口 政春
【評】出征前夜の記憶を今も生々しく回想。黙々と煙管を燻らせるのみの父親の心情。「蛍火」は総てを象徴している。
呼ばれたるような気がしてのぞき込むトマトは五ミリの実を結びおり 尾道市 橘和 淑子
【評】「呼ばれたるように」に淡い詩情がある。「五ミリの重さ」も実感させる表現であり、幼子の様な愛着を持たせる。
背をさかれ枕並べし何百のウナギに産地聞くべくもなし 三原市 竹内 鏡子
【評】産地偽装の問題に焦点を当てながらも、ウナギの非情な光景に心をうごかす作者。結句、含蓄に富む情愛深い表現。
生き残りし集団自決の(のち)(せい)認知症得て安らぎを()るとは 福山市 亀山 博恵
【評】戦後六十四年、今尚、「集団自決の後の生」と詠まれる人のあることを忘れてはならない。下句、更に、つらい。
炎天の庭に鬼百合咲き終えぬ原爆投下の日は巡り来る 広島市 広谷あきえ
【評】暗紫色の斑点をもつ橙色の鬼百合に原爆のもつイメージを重ねて妙。鬼百合の語感もいい。淡々とした表現に哀感がある。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
堰越えて試験湛水出づる音沈みしものの叫びの如く 広島市 浜本タツエ
わが峡の上空旋回し征ける志願の若鷲ありしもはろし 広島市 橋 洋子
ヒロシマを語れず語らぬ六十四年雨は夜すがら地に沁みて降る 府中町 西村 昌子
封印をしてきし記憶呼び覚まし君は描きし被爆の絵本 広島市 出原 知恵
稔り穂に乗る小波の二重三重夕日に輝く津和野山寺 呉市 塩家 千佳
鬱の字の中の木姥目樫なればうつの木みしみし庭をはみ出す 広島市 田部 紀子
万緑に姿潜めし老鶯(ろうおう)の声静まらす入相の鐘 広島市 竹下 文彦
遠き痛みの語り部として娘の知らぬこの地踏みしめ母は生きたり 広島市 櫛  詠水
待ちわびし恵みの雨に息づきてふとるキュウリの朝どりを噛む 安芸高田市 実方久美江
一合の米とぐ釜の流水に浮かんで消ゆる顔かおのあり 呉市 岩崎美津子
機械停め選りて求めし鎌の柄に屋号記してキラリ稲刈る 庄原市 永宗 英美
病む母の寝間着濯ぎて褄を張る日焼けせし父の太き手偲ぶ 三次市 向井 節子
胸もとをプルンと揺らしてさわやかに夏を連れこむ通勤電車 東広島市 本谷 正輝
麻痺の手で名を書くけい古五度六度 投票へ行くサルビアの道 呉市 島崎芙美子
老人力の涌かざる今日は農休日地下足袋洗う手に陽のあそぶ 尾道市 藤田 久美
菜の花のいっぽん道を帰り来る制服なじまぬ一年坊主が 大竹市 赤瀬 勝昭
単線を乗りつぎ(とお)き忘れもの見つけるように故郷(ふるさと)にいる 広島市 三原 豪之
下つ家の落葉焚けるやほろほろと煙のぼり来夕光のなか 三原市 岡村 光里
川水の秋の気配に澄みゆけば鮠の群れより光うまるる 三原市 岡村 禎俊
小さきもの集へば強し蚊柱の視野を霞ませ行く手をはばむ 三原市 大森 昭恵