けんみん文化祭ひろしま'11文芸祭合同大会
トップページ 事業概要 けんみん文化祭ひろしま'11 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】鳥山順子 選

【短歌】鳥山順子 選


※コンピューター環境で表示するため横書き表記としています。ご了承ください。

小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
きづいてるきづいていないここからがセミとぼくとの真剣試合 県立総合技術高等学校一年 尾形 慎吾
【評】蝉取りの様子が生き生きとリズムよく表現されています。「真剣試合」するセミとぼくは対等なのですね。
母の手の生命線をながめ見る長さを知ってつけ足すライン 庄原市立庄原中学校三年 原田 崚汰
【評】母にもっと長く生きていて欲しいと願う気持を「つけ足すライン」と表現したのが良かった。大切なお母さんです。
階段の下から見上げ区切られた夏を感じる深い青さに 県立忠海高等学校三年 森貞 英大
【評】「区切られた夏」に、空間や時間だけでなく、作者の閉塞感も思われます。色彩があり、希求を感じさせ、知性の窺われる作品です。
じいちゃんとやきゅうをしたよくわがたもわたしのスカートひっついたまま 三原市立神田東小学校一年 久保奈々美
【評】くわがたが好きなので遊ぶときも一緒なのですね。楽しかったね。「スカート」の次に「に」を入れるといいです。
てれながら肩を並べてかえる道私の鼓動休まず動く 銀河学院高等学校三年 細川 智子
【評】「私の鼓動休まず動く」に並んで歩くドキドキ感が伝わって来ます。嬉しい気持がうまく表現されています。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
朝起きて窓を開けたら朝顔だ朝のあいさつ顔をあわして 銀河学院中学校二年 松原  愛
マンガ読む日曜の夜バカだなぁつぶやく宿題無視するわたし 三次市立塩町中学校三年 辻  春希
けんかしてなかなおりしてけんかしてぼくの青春つつじ色だね 福山市立駅家中学校二年 富田 拓己
梅雨が来た周りはジメジメ外はザァー声に出したら音がいっぱい 県立忠海高等学校二年 大下 眞由
競い合う私は五つ赤い山ぷっくりはれて夏の思い出 広島大学附属小学校六年 中井結衣子
夏の空見上げてみれば澄んだ青雲とけんかし露草になる 福山市立駅家中学校二年 池上 夢輝
これだけは間違いないと思ってたこともいっぱい間違いだった 銀河学院高等学校一年 山田 早姫
ふで箱の中身のペンをローテーション日々の授業を楽しむ秘訣 銀河学院高等学校二年 三好 千瑛
竹の川真白そうめん流れるよそうめん流しはツルツル涼しい 庄原市立粟田小学校五年 田森 百菜
月赤くひとつはじける夜花火北の大地の悲しみ思う 銀河学院高等学校二年 古谷美砂子
夏の夜汗かき帰宅の父をみて我が将来の決意固まる 銀河学院高等学校三年 小林啓太郎
全国の筆を支えし熊野町受け継ぐ伝統つくる手に 熊野町立熊野中学校一年 重川 琴音
今の風頬撫でていた今の風もうこの地へは戻ってこない 広島市立五日市中学校二年 木原 美和
早くしろセミに言われて仕方なく地層と化した宿題をする 広島なぎさ中学校一年 吉野 夢愛
プールの中笑顔のようにぴちゃぴちゃとはじける水は光り輝く 庄原市立比和小学校六年 田中 遥香
筆作り糸締めすると臭かったさんまのかおり焼けてく匂い 熊野町立熊野中学校一年 内山 陽介
夕焼けの空に消えゆく蝉の声虫取り網で追いかけた夏 県立大和高等学校三年 池田 麻耶
へそとひざ合わせて四回手術してこうなりゃ自慢の入院生活 比治山女子中学校一年 本城 泉美
自分よりはるかに大きいお母さんそう思ってた十二年前 県立総合技術高等学校三年 定丸 智香

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
百歳の媼は遂にみまかりぬ一人居ながき庭のどくだみ 福山市 伊賀乃里子
【評】百歳まで頑張って生きた媼の老年が、「遂に」「庭のどくだみ」で暗示されている。どくだみは薬草だが独特の臭みがある。多くを言わず、巧みな歌。
若き日の育児記録の一直線空見ず花見ず子のみ見ている 広島市 小田 好子
【評】育児記録に作者は今、当時の懸命さと余裕のなさを見ている。歳月を経て見えるものがある。「一直線」が良い。
シベリアも舞鶴も話すなき兄なりき老いて文化祭にバイオリンを弾く 尾道市 中田 浩子
【評】過酷な体験を封印して老いた兄を思う作者。バイオリンは深い音色を湛えていることだろう。哀しく美しい歌。
「来年もお会いしましょう」被爆者の健診なせし医師より賜う 庄原市 蔦 トキエ
【評】医師の励ましに感謝し、ひとまず安堵する作者。被爆から六十六年経てなお不安を抱えて生を繋ぐ。静かな反核平和の歌として読んだ。
四斗樽の大根の上にどっかりとすわり込む石祖母の面影 三原市 纉c 淳子
【評】沢庵漬にまつわる回想か。「すわり込む石」に祖母が重なる。確り者で家族に頼られた祖母だろう。下句がよい。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
田拵へ始めてよしと村中の辛夷の花の次々と咲く 三原市 中原 幹枝
報道の小さき事実孤老死のありたる仮設住宅かせつよかげろう燃える 呉市 清野 利恵
八十代それは若いと入所者の話ははずむケアハウスなり 広島市 沖川とみえ
「エルドール」港が見える喫茶店乾いたパスタかもめと食べた 三原市 涌澤 邦章
朝露の畦みちの草踏分けて休耕田を今日も見廻る 尾道市 橘和 政実
「三太郎」秋大根の品名に父の名思うこの種を買う 三次市 末丸  緑
戸を繰ればきそひ飛び出す仔牛らの今朝られゆく犬ふぐりの野辺 庄原市 家島 晶子
がらくた市に買いしスタンドの薄ら灯に泡のごとき言葉書き留む 大竹市 長門 輝子
逢う度に死を言う母を茶化しては一匙ごとのアイスクリーム 呉市 吉川 元子
残り布手さげ袋に仕上がりて差し上げる人を思いいる妻 福山市 松川 博行
沼杉の高きに止まる青鷺の視線の先に疲れたわたし 福山市 大江 文枝
弁柄の家の土台に金具の輪牛馬繋ぎし繁栄の跡 安芸郡府中町 石橋 康徳
好きなもの一番さかな二番目は独りが好きと少し嘘吐く 呉市 平見 光子
今年ほどもらい泣きした年はない二千十一年七十五歳 大竹市 本田 淳弘
超クールマジイケてるねおジイちゃんかく言ふべきを吾子に教はる 東広島市 三ノ京由香
剣山頂さんちょうは人・ひと・人で叫べない空にならない胸に息吸う 呉市 遠藤 晴美
失速もときに気楽と居直りて畳の上の夕映えにいる 廿日市市 藤本千代子
母親となりて鳴き声変わりたるつばめのさえずりに心かたむく 安芸高田市 四良丸シゲ子
雪化粧地下で鯰が騒がしい光も影もこなごなになる 山陽小野田市 松木  宏
さくら咲く寺に眠れる夫にして年忌ははらからの花見となれり 三原市 今田みや子