けんみん文化祭ひろしま’15文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま’15文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】高野和子 選

【短歌】高野和子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
ばあちゃんが汗かき水やり実らせたはちきれそうな茄子の紫 清水ヶ丘高等学校一年 古本みのる
【評】何よりもリズムがよい。ばあちゃんの働きによって実った茄子から、努力すれば結果が出ることを言外に伝える。
カタカナで伝え続けるこの先もヒロシマナガサキフクシマの夏 盈進中学校二年 宮本 怜菜
【評】被爆七十年目の広島と長崎、加えて福島の原発被曝、カタカナで伝え続けたいとする表現に強い意志を感じた。
えんがわでするりと風がほおをなで側の麦茶の氷がカラリ 庄原市立庄原中学校三年 岡本  睦
【評】風のなせる技が麦茶の氷に及んだ理由を伏せた点が手柄。よって即物的で知的な一首となった力量を評価したい。
クロールの折り返すとき地球ごとわたしを軸にぐるんと回る 県立広島高等学校三年 青山ゆりえ
【評】泳ぎの経験から発した一首で三句以下の表現がユニーク、地球ごと回る作者の強靭な軸に読者を巻き込む力あり。
くれないの空の下には島々を抱いて束ねる瀬戸内の海 県立因島高等学校一年 石原亜夕未
【評】三句から四句への擬人化的表現にやさしい母性のような瀬戸内海をイメージさせる秀作、言葉の構成もうまい。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
青い空真っ白い雲一つあり仲間を探す子供雲だな 庄原市立庄原中学校一年 高井 蒼駿
うまれたよすけた体の子メダカがひれを動かし泳ぎの練習 三原市立木原小学校六年 花本萌々子
朝顔に顔近づける子供達咲いた数だけ笑顔はじける 県立総合技術高等学校一年 本間 鈴花
窓の外夕焼けに染まるもみじ葉は額縁の中で揺れる絵のよう 呉市立呉高等学校一年 臼井  桜
雨の中明日に向かってのびる草一つの命ふまずに歩こう 庄原市立庄原中学校三年 稲垣龍之助
「ありがとう」言われて返却お客さん本も私もうれしくなるよ 府中町立府中中学校二年 山田 千遥
もうすぐで終わってしまうこの休み海の水が少しつめたい 県立忠海高等学校三年 梨和  優
そよ風に田んぼの苗がゆれている苗のダンスださわさわさわさわ 庄原市立粟田小学校三年 若林 咲来
八・六真西に向かう黙祷の幾星霜に寄せる思いよ 福山市立培遠中学校二年 宇宿麟太郎
幸せだ本の世界にとけこんでこのまま時が止まればいいのに 福山市立培遠中学校二年 三島さくら
高級な売り物にないあたたかみじいちゃん作のあきのぶメロン 比治山女子中学校一年 佐々木綾音
アゲハチョウ見つけてネットかつぎ出るふわりさらりと隣家の庭に 比治山女子中学校二年 神田 久美
初盆に曽祖父の声思い出す伝えてくれたヒロシマの夏 呉市立仁方中学校三年 梶本 智夏
ドングリに顔をかいたらおにあいだすてきなぼうしもっているんだ 庄原市立比和小学校二年 山本 沙和
負けちゃった君は笑って言ったけど私は知ってる鼻声の理由 県立三原高等学校二年 山田茉里奈
あの頃は大きく見えたひまわりが今では一緒成長したな 県立因島高等学校一年 箱ア 樹羅
授業中こっそり開く世界地図今日はどこへ旅に出ようか 県立世羅高等学校三年 高木 捺美
水中で赤いドレスをゆらしてる金魚すくいに屋台の中で 呉市立呉高等学校一年 興山明日香
遠くから自分を呼ぶ声ホッとする夕日のように暖かな母 県立佐伯高等学校一年 田中 慶輝
テレビ越し涙を流すその家族握る遺影は特攻隊員 県立総合技術高等学校三年 福田 姫世

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
ピースして写って良いかと児童等が原爆ドームを背にして問える 広島市 矢田 直美
【評】原爆ドームを背景にピースすることをためらった児童の心の動きに着目しそれを大切に扱った作歌動機に感動。
行く先の見えてゐるのか九条の思想の外を鬼やんま飛ぶ 広島市 三浦 恭子
【評】憲法を無視し泥縄式で安保関連法案を成立させようとする事への恐れを鬼やんまに見立て作者の考えを裏付けた。
炎天の穂孕みの田にたっぷりと水吸はせたく山の池抜く 庄原市 家島 晶子
【評】】穂孕みの稲に対する愛情が下句の作業により如実に表現された。主観語を廃した故の言葉の働きが大きい。
蜩の一際身に泌む夕べなり生前戒名夫婦で拝受し 庄原市 橘  京子
【評】夫婦そろっての生前戒名拝受に作者の安堵感と一抹の寂しさを上句に蜩を据えたことにより心奥を深くしている。
地下足袋の十の小鉤をしっかりととめて草刈機のエンジンをかけ 神石郡神石高原町 馬屋原 要
【評】草刈りの準備をする作者が生き生きと見える作。結句の中途半端な止め方は次の動きへのステップとして効果的。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
生き延びし負い目背負いてきし兵の今語り出す遺言として 三原市 村上 召三
ボールペン今日で一本空になる週に一通母への手紙 広島市 小林 孟司
ツバメさん空家対策かリホームかくわえた土を古巣に重ねる 三次市 仁科美代子
図書館の扉のあひゆ静寂がわづかに夏へこぼれ出したり 広島市 熊谷  純
母の植えし垣根の葉蘭風に鳴る年が明ければ五十回忌 大竹市 赤瀬 勝昭
患者らのリハビリ終えし足取りを追っかけている視界のすみで 広島市 野坂 寿子
掃除婦のその横顔のふくら顔一声かけて手洗いをする 尾道市 池田 友幸
解禁に合わせ投網を繕いて待ちいし亡夫よ夏が又来る 庄原市 川崎冨士子
ふつふつとビロードの玉にふとりゆく六月の雨の結びたる梅 山県郡北広島町 西楽 紀恵
帰省のやっぱりひとつは忘れてるパールピアスはまた送るから 豊田郡大崎上島町 底押 悦子
被爆せし蝉の末裔すゑかも白花の夾竹桃に六日むいか朝鳴く 廿日市市 中村 公子
原爆に焼かれし少年母の前に「お淨土は本当にあるの」と問いたりしと 山県郡北広島町 清中 勝枝
彼のひとのつひの絵にあり灰色の原爆ドームのむかうの朝陽 三原市 村上佐登子
ながらえて八十余齢もすぎたればうからの被爆死、面影おぼろ 山県郡北広島町 金元千代香
削るたび森のかおりを楽しみて言葉つむぎて3B走る 三次市 寄宗 照子
吾亦紅バラ科と教えた母の待つ老人ホームへアクセルふみこみ 広島市 伊藤スミ子
棟梁の仕事を生涯つらぬきてぶ骨のままに夫は逝きたり 広島市 中川多鶴子
雪の夜君の心に触れたくて真っ赤なコートの袖口つかんだ 広島市 稲葉あきこ
振り向かず先を望まず生きるすべ母を憶いてひとり茶をくむ 広島市 小尻カズ子
臥す妻の襁褓を換えてやさしさの熟度を今朝のおのれに質す 尾道市 藤田 久美