けんみん文化祭ひろしま’16文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま’16文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】上條節子 選

【短歌】上條節子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
優勝し抱き合う先輩眺めつつ怪我した足を少し動かす 県立三原高等学校一年 安田 彩乃
【評】作者の複雑な思いが下句のわずかな動きに象徴されている。上句から下句への視点の引き具合も効果的。
授業中ぐうっと鳴ったその瞬間ごまかし方を見つけられず 呉市立呉高等学校一年 川嵜 乃愛
【評】振り返れば何でもないことも思春期には大問題。心の動きが端的に詠われ、慌てぶりが目に見えるようだ。
チャイム鳴りみんなが帰る後ろから今日の君を目に焼き付ける 福山市立福山中学校二年 野田奈緒子
【評】「今日の君」がよい。今日一日のさまざまな君を見つめていたのだろう。言葉にできない思いが伝わる。
うちのねこカエルにモグラ食べるんだやせいになったもうもどらない 庄原市立口北小学校二年 岩瀧  巧
【評】かわいい猫の別の一面を見たおどろきと、とまどいがよく伝わる。でも猫は今も変わらず君のことが好きだと思うよ。
気が付けば終わりを向かえた夏休みポケモンGOも旬終わりつつ 県立三原高等学校二年 田中 翔
【評】この夏のポケモンGOの過熱ぶり、旬の題材を夏休みの終りと重ねたところが見事。初句の入り方もうまい。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
弓をひくねらいさだめる黒い的青い空にゆれるかげろう 県立三原高等学校二年 平田 ゆう
祭り過ぎ稲穂ふくらむ夏終盤きれいな花火ときれいなノート 県立廿日市西高等学校二年 谷本 大樹
木漏れ日がレールを照らす碓氷路の今は走らぬ汽車の行く道 県立三原高等学校二年 明日 謙伍
汗にじむラムネの壜の影の中日差しも青く染まりゆく夏 県立尾道北高等学校一年 前山 春菜
体育館ひびく足音ひびく声夢を残して夏が終った 比治山女子高等学校一年 宇山 結菜
この思い自分の声で伝えたいストーリーからあふれる朗読 広島市立大塚中学校二年 川本 絵莉
満月の夜空を見上げ私達もちをつき食べうさぎの家族 広島市立楠那中学校二年 川井穂乃佳
ぶたさんがせきをしているかあさんがちゅうしゃをしたよてつだったんだ 庄原市立口北小学校一年 日野 光咲
流れ星見つけた数はバラバラでわたしは十個おばちゃん一つ 広島市立安北小学校五年 沖野 佑姫
かき氷頭がキーンとなっちゃってちょっと休けいまだ食べれるよ 庄原市立高小学校三年 藤谷 航平
カープがね優勝しそうだうれしいな一度だけでも生で見たいな 東広島市立木谷小学校四年 藤田  翔
はいしゃさんドキドキするよいたいかなまい日はみがきわすれてないよ 三次市立作木小学校二年 山口 巧寛
大ものだつり上げたさおタイがいるあわてたぼくはぐらぐらゆれた 庄原市立口北小学校二年 池田 倖萌
聞こえない友の話と笑う声全てがせみの鳴き声の中 呉市立呉高等学校二年 臼井  桜
夕暮はふわりと潮のかおりして夏の始まり教えてくれる 清水ヶ丘高等学校二年 ディアス・デイシー
ししと祖母野菜をかけて知恵くらべ攻撃側がやや優勢か 呉市立広中央中学校一年 中山  陽
授業中光の速さで落ちてゆく僕の頭は夢の世界 広島市立大塚中学校二年 舩倉宗一郎
宿題を面倒臭いとさぼったらクーラーはひどく私に冷たい 比治山女子高等学校一年 秋本 菜々
じいちゃんが投げるキャラメル受けとれば今も変わらぬコミュニケーション 呉市立呉高学校二年 渡邉 菜歩
憧れの貴方の背中追いかけて私も少し輝けるかな 県立三原高等学校二年 岡部 侑里

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
梅雨前のひかりとかぜに触れしとき声なきこゑす死没者名簿 広島市 丸亀 純子
【評】風通しの日の歌。死者の声がわらわらと名簿のあわいから立ち昇るかのようだ。結句の重さと余韻が一首を支えている。
ひっそりと碑文に残る人柱七十五町歩今に潤す 庄原市 永宗 敏昭
【評】人柱という犠牲の上に作られた堤が今もその地を潤している事実の重みが胸に響く。七十五町歩の数字も効果的。
万灯を掲げしごとく辛夷こぶし咲き峡は田毎に水走らせる 庄原市 家島 晶子
【評】すぐれた叙景歌。辛夷の花は別名田打ち桜とも言う。峡の季節の始まりの躍動感と光、風、匂いまで感じさせる。
白芙蓉真中まなかにつき出す長きしべシンクロ乙女の足によく似る 廿日市市 中村 公子
【評】意表をつく発想だが芙蓉の季節感とも相まって納得。蕊と共に白い花びらもまた揺れ広がる水紋のようでもある。
天空に一編の詩を読むごとく窓辺で君は雨をながむる 広島市 熊谷  純
【評】君を詠んだこの歌もまた一編の詩である。君の具体はわからないが作者のやわらかな眼差しと結句の余情がいい。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
二十九万の命に祈るオバマ氏の五秒へ声なき意志を重ぬる 広島市 三浦 恭子
草いきれの中にすっくと鬼百合は選ばれしものの衿持に立ちおり 広島市 小田 好子
問う事を禁じしままに母逝きぬ父の被爆死われの誕生 呉市 加門 光子
草を刈る背を照らす陽に力あり今日梅雨あけとひとり思えり 三原市 山重 富子
一言も人と交へず暮れたりと日記を閉づる小雨降る夜半 三次市 林  勝子
西の窓まつ赤に染めて日は暮れてたきこみ御飯の牛蒡が匂ふ 福山市 大江 文枝
肩張らず今日も一日生きました 夕日の中に稲雀啼く 広島市 高野 和子
孤独死の検視終えれば星流る死者も生者も浄化されゆく 呉市 清水 孝子
込み上げる胸の痛みは恋に似て恋にはあらじ養母はは逝きませり 呉市 河崎 典子
坪池の緋色の魚のなめらかさ水面にゆらぐ般若波羅蜜多 府中市 内海 誠二
つづまりはわれも重ねんしくじりと思いつつ母を叱りてさびし 尾道市 砂田 悦子
売れ残る小鯵ひらきて天に干し湯舟に浮かぶうろこと遊ぶ 広島市 加土 道子
玉葱はもう取りごろと言ひなれて生きつぎゐたればはや地元民 安芸高田市 小山美惠子
気のきかぬ妻だと思う告知へのその慰めもせず米を研ぐ 広島市 岡田 郁枝
ペチュニアの花柄摘みつつふと思うわが亡骸を仕舞うは誰ぞ 庄原市 橘  京子
雲間より差しくる光に輝ける草刈終えし土手の土塊 三原市 桝宗 範子
上り八便下り九便の三江線駅の敷石苔むしてあり 安芸高田市 井上  愛
背丈伸び無口になりし少年のこころは青きレモンの如し 尾道市 村上 和子
山里に育ちし我のわだかまりようやく消えて天然水買う 福山市 梅本 武義
手を振つて笑顔を見せて退院す実習生の我に向かひて 呉市 丸本由祈子