けんみん文化祭ひろしま’16文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま’16文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】香川哲三 選

【短歌】香川哲三 選


※コンピューター環境で表示するため横書き表記としています。ご了承ください。

小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
鞆の浦夜の潮風受ける時常夜の光り優しく灯す 銀河学院高等学校三年 宮本 尚実
【評】潮待ち、風待ちの鞆の浦に、今も残る常夜灯の灯りが、目に浮かぶように表されている。とても詩情豊かである。
「辛ければいつでもここに来るんだよ」友の優しさ伝わる言葉 府中町立府中中学校二年 津留 侑希
【評】友の言葉の温かさ、それを受け止めている作者の心の安らぎが、言葉のすみずみにまで滲んでおり、心打たれる。
二年前泥と涙に埋められた忘れはしない広島の雨 比治山女子中学校三年 金川  雅
【評】二年前の広島土砂災害は誰にも忘れることの出来ないもの。そうした気持を率直に強く詠じており、身に沁みる。
帯紙にひかれて買いし文庫本刻を忘れてひと息に読む 清水ヶ丘高等学校一年 木村  鈴
【評】具体的に述べた第一・二句が大切な働きをして下句を結んでいる。作者の心がとてもいきいきと伝わってくる。
鐘のが広島の空にこだまする永久に流れる平和の祈り 呉市立呉高等学校二年 石中 愛美
【評】一読して平和記念公園の鐘だろうことが想起される作。平和を願う作者の気持が優しい調べの中に通っている。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
放課後の窓から見えるグラウンド夕やけ色のあなたの背中 福山市立福山中学校二年 大内 香乃
優勝し抱き合う先輩眺めつつ怪我した足を少し動かす 県立三原高等学校一年 安田 彩乃
あの日から七十一年過ぎたけど変わったヒロシマ変わらぬ時間 県立向原高等学校二年 下田 珠莉
暗やみに光りをともしひびく音色とりどりの花火がひらく 庄原市立比和小学校六年 杠  瑞樹
二十五年ぶりの感動呼びおこす赤い風船舞うスタジアム 盈進中学校二年 花木 愛佳
中三の去年の夏を思い出し時の流れに気づく切なさ 県立因島高等学校一年 濱田 天宝
あぜ道をはしればかえる水の中ぽちゃんぽちゃんと平泳ぎする 庄原市立高小学校三年 前杢狼太郎
学校で一人ぼっちで過ごしたい一人にさせてと心の叫び 府中町立府中中学校二年 山本 啓太
きれいだなみどりの香りに包まれて燃えるたき木のまたたく炎 銀河学院中学校三年 藤原 彩名
はいしゃさんドキドキするよいたいかなまい日はみがきわすれてないよ 三次市立作木小学校二年 山口 巧寛
照りつける太陽の下のグラウンド努力をつんだ練習の日々 広島市立大塚中学校二年 東  杏里
瀬戸内の透き通る海きれいだな潮の香りと海の波音 比治山女子高等学校一年 柏原 瑠菜
落ちてゆく線香花火を見つめては貴方を思う星空の下 広島なぎさ中学校二年 佐藤 祥花
ごうのかわかわぶねにのってゆうらゆらこいをみつけておおはしゃぎする 三次市立作木小学校一年 下岡 快成
練習後木影の下ではっとする葉のすきまからのまぶしい日差 府中町立府中中学校二年 高下 優芽
リオ五輪手に汗握る熱戦に寝るのを惜しみ見る夏の夜 県立総合技術高等学校二年 原 千捺
夜の空ぱっと開いた火の花は見た人々の心を照らす 県立総合技術高等学校三年 中沖 幹斗
見つかった私の居場所ここにある演劇通しつかんだ絆 呉市立呉高等学校二年 岡田優芽華
オレ達が絶対行くんだ甲子園悔しさ胸に夏が始まる 呉市立呉高等学校二年 松 晃佑
おとうさんがびょうきになってあえないよべんきょうがんばってよろこばせよう 庄原市立口北小学校一年 桑原  仁

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
癒えざると告げられしよりの長き日々たどりつつ妻の試歩に肩貸す 尾道市 仲尾  修
【評】事実に沿いながら述べた言葉の一つ一つに、作者と妻との深い絆が感じられる。境涯を詠じて重く深い内容がある。
遠き日に亡き母と来し熊本城崩れし石垣呆然と見つ 安芸郡海田町 堀内 孝子
【評】損壊した熊本城の姿は地震被害の甚大さを象徴するもの。作者自身に引きつけた表現が一首を生動させている。
問う事を禁じしままに母逝きぬ父の被爆死われの誕生 呉市 加門 光子
【評】「問う事を禁じし」の理由や背景などに一切触れることなく、事実を卒然と述べた言葉が、心の奥まで響いて来る。
エコタウンは新しき団地一年生十一人に今朝も旗振る 呉市 古谷 明子
【評】新しい団地の当然として子供達が朝々通う道。活気に満ちた町の様子と作者の快活な姿が目に浮かぶようである。
集い来る人それぞれに暦史ありデイサービスにひとひを遊ぶ 広島市 西田 裕子
【評】さまざまな人生を経た人々が集うデイサービス、そこに一日を過ごす作者の眼差や思いが作品に息づいている。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
三十万人超えしひろしまの被爆死者なかの一人はわが父なりき 広島市 出原 知恵
定年となりて得られしわれの朝四枚切りのトーストを焼く 広島市 池田 清子
華やかなくらしも知らず打ち過ぎて後期高齢者保険証届く 山県郡北広島町 纐リ 倫恵
二十五年ぶりのカープの優勝を八十二歳の母と喜ぶ 豊田郡大崎上島町 底押 悦子
清正の築きし城の石垣は崩れて平成の梅雨に打たるる 広島市 井上 宝護
晩秋の庭を明るく彩りし満天星も裸木となる 三次市 錦  武志
二十九万の命に祈るオバマ氏の五秒へ声なき意志を重ぬる 広島市 三浦 恭子
梅雨前のひかりとかぜに触れしとき声なきこゑす死没者名簿 広島市 丸亀 純子
上り八便下り九便の三江線駅の敷石苔むしてあり 安芸高田市 井上  愛
吾が腕を胸に引きよせ脈をる青年医師の手は温かき 広島市 田中 睦子
われ老いて聞ゆる声あり南洋にいまなほ水漬く父が無念の 東広島市 守田 昭文
病みしより寂しく心をとざしきてつつじが朱も草にうもるる 三原市 大森 瑞枝
故郷の田畑しだいに消えゆきてマンションばかり建ち並ぶ今 三原市 岡本 清子
雲間より差しくる光に輝ける草刈終えし土手の土塊 三原市 桝宗 範子
亡き夫に勧められたる晩酌を今宵の月に独りたしなむ 広島市 幾田とし子
東西に流れる故郷尾道の水道泳ぎし若き日偲ぶ 尾道市 小畑 宣之
逝きし子の年を数えるむなしさよ空澄みわたり彼岸花咲く 広島市 林 美恵子
若者と机を並べ学びけり学ぶ喜び日々かみしめて 呉市 河内 知子
新緑の空気を胸に膨らませスピードあげて自転車を漕ぐ 山県郡北広島町 出本 恵子
そくそくと朽ちゆくものを濡らし行く北備後路に朝霧深し 三次市 佐藤 昌樹