けんみん文化祭ひろしま'18文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'18文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】香川哲三 選

【短歌】香川哲三 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
じりじりと肌に暑さを感じつつ泥に埋もれた思い出探す 県立三原高等学校三年 三井 彩加
【評】炎天下で泥を掻き分けながら探し物をしているという事実に言葉を失う思いがする。豪雨災害に関する作品だろう。
石ひとつ海に落とすと光り出すひとつふたつの海ほたるたち 県立三原高等学校二年 木 涼凪
【評】一つ一つの言葉が優しく綴られており、作者の海ほたるへの思いが、繊細に、またみづみづしく伝わってくる。
命には限りがあると知りながら受け入れられない祖父との別れ 呉市立呉高等学校三年 谷本  栞
【評】永眠した祖父への心情を綴った言葉はどれも純真で分かりやすく、作者の人柄をも感じさせる静かな響きがある。
平和への願いを運ぶ折りづるはあの日のことを思い出させる 広島市立楠那中学校二年 中井 佑衣
【評】この作品に表されている生徒の思いは掛け替えのないもの。八月六日に何が起きたのか、永久に忘れてはならない。
思い出や日々の暮らしを流しゆく豪雨の前になす術もなし 県立総合技術高等学校一年 西辻 正人
【評】七月の豪雨は、自然の猛威に人の力が及ばない事を改めて感じさせた。そうした思いがしっかりと伝わってくる。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
断水と停電つづく被災地にやさしい心いっぱい届く 県立総合技術高等学校一年 松村 佳愛
家の外まるで映画のワンシーンすべてが水でおおわれている 県立総合技術高等学校二年 松村  空
かさみたいでっかいふきをさしたんだあめがつうっとすべっていった 庄原市立比和小学校一年 松島 綾花
八月のあの日のきおく忘れない世界に平和を伝えるために 広島市立楠那中学校二年 出本 咲来
災害で十日早まる夏休み電車動かず恐怖の一夜 県立竹原高等学校三年 樋口 依緑
教室にみんなが座るこの景色半年後には消える寂しさ 県立世羅高等学校三年 上野 愛莉
ボランティア汗水流し泥掬う土のうの数だけ努力の証 県立竹原高等学校二年 松島 正弘
部活動したたる汗をぬぐいつつ一つのボールを追いかけた夏 銀河学院高等学校二年 藤原 匠希
部活後に冷水機めがけ一直線かわいた体が生き返る時 福山市立福山中学校二年 堀  力良
断水が九日続き大変だ毎日いつも冷凍食品 県立総合技術高等学校一年 岡田 綾乃
電気ない水出ぬ夜の晩御飯食卓照らす夜の月光 県立総合技術高等学校二年 黒田 力玖
災害で家電が全て流されて残ったものはゴミと泥のみ 県立総合技術高等学校二年 羽出重宗一郎
土砂くずれ目の当たりにし言葉なし今改めて怖さがわかる 県立総合技術高等学校二年 信重 李宇
穏やかに平和に過ごすありがたさ二度と来ないで豪雨災害 県立総合技術高等学校二年 小濱  蓮
浴衣着て楽しく歩いた尾道の光輝く夏の夜の空 県立総合技術高等学校三年 向井 愛莉
自衛隊北海道から駆けつける感謝しかない仮設の銭湯 県立総合技術高等学校三年 鶴田 美妃
失ってはじめて気づくありがたさ水はみんなの命をつなぐ 県立三原高等学校二年 三森 遥佳
駆けまわる汗のまじったグラウンド強い日差しにふく夏の風 県立三原高等学校一年 弓取 天地
せんぷうきみんなでとりあいけんかしてかあさんぷんぷんへやはむんむん 庄原市立東小学校一年 森本菜々子
どんな日もわたしのそばにいてくれる心支える母の存在 県立三原高等学校一年 山際 莉々

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
豪雨被害広がり心騒ぎつつ母にいつものインシュリン打つ 呉市 佐々木節子
【評】豪雨被害が広がるのを不安に思う気持と持病を持つ母への対処が抜き差しならない関係をもって詠じられている。
親しかりし面輪やさしき友人が犠牲者となり朝刊に載る 三原市 小白 照子
【評】親しい友人が犠牲者となったのを、朝刊によって知ったという事実が重い。この作品も豪雨に伴うものだろう。
緑内障黄斑変性症白内障やがて光を喪うわれか 福山市 横川美重子
【評】眼の病を重ねて持つ作者の不安な気持が切々と伝わってくる。この作品には作者の慨嘆さながらの響きがある。
線路の土砂撤去されたり再開の一番列車わが前を過ぐ 安芸郡海田町  堀内 孝子
【評】七月の豪雨では交通網も甚大な被害を受けた。その復旧一つが成った鉄道を詠じていて、言葉が生動している。
「目ざめたらお食べ」と妻に書き置いて果樹園予防の噴霧器背負う 尾道市 仲尾  修
【評】上句の言葉に妻への愛情が良く出ているし、続く下句からも作者の生活が親しく感じられて、温かな雰囲気がある。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
肉親を探す伝言まのあたり被爆校舎の剥したる壁 安芸郡府中町 石橋 康徳
拡大鏡縦へ横へとすべらせて今日の終りの家計簿つける 庄原市 荒木美智子
誘導し行方不明になりし人若き警官土砂が呑み込む 広島市 樫原 葉子
立葵見れば戦後のバラックの校舎ひとつを思い出すなり 広島市  吉川 徳子
草刈機エンジンの音ひびかせて夏草しげる畦道を刈る 尾道市 橘和 政実
平成の最後の夏も終戦を凌ぎし昭和の記憶は失せず 三次市 林  勝子
流木の折り重なりし我が農地再起を誓ひ土砂を運ばむ 庄原市 けくりかずお
社への道のぼりゆく早朝のぬれに冬の月残る見ゆ 呉市 福庭加恵子
初孫の誕生祝いに贈られし国債百円箪笥にねむる 福山市 箱田 愛子
手作りの風鈴おちこちかかりゐて夏の終りの竹原をゆく 広島市 清水 勝子
祖たちの座り来し畦の平石に一仕事終えてわれも寛ぐ 三原市 桝宗 範子
進行癌の不安消すにや夜のふけて夫は牧水を低唱しおり 三原市 岡村 光里
歳ふれど共に学べるありてしたしく仰ぐひろしまの空 広島市 中川多鶴子
雪止みて白く静まる公園にさざんかの花ひときわ紅く 山県郡北広島町 出本 恵子
うたごころしきりに湧きて楽しき日病忘れて歌に遊べる 広島市 井上 宝護
数知れぬ善意の人に支えられ障害の子と五十年歩み来 東広島市 後藤 和子
玄関に破れたままの傘を置くあの日の雨を忘れぬやうに 広島市 森 ひなこ
夕日受けくれない深き川の面を見つつ残生をひとり計りぬ 三原市 山重 富子
汽車を待ちホームに遊ぶ鳩を見る旅立つ友の悲しき別れ 広島市 宍戸 元信
片言で内緒話をする孫の息暖く耳にかかりぬ 広島市 田中 睦子