けんみん文化祭ひろしま'20文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'20文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【俳句】木村里風子 選

【俳句】木村里風子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
蜩よ日を落とすにはまだ早い 広島市立戸山中学校三年 田辺 悠悟
【評】蜩は朝夕に鳴く蝉。何かをして捗らないことがあるのに夕セ蝉が鳴く。はがゆいのに鳴くなと言いたい。
送り火のけむり見る祖母目に涙 福山市立城北中学校二年 橘  龍希
【評】送り火は盂蘭盆の最終日、祖先の精霊を送るためにたく火。祖母には重い思い出があったのであろう。
雀の子幼さ残る巣立ちの日 県立三原高等学校一年 加村 理奈
【評】雀の子をみつめている作者、作者には可愛い子雀である。
八月の癒えることなき記憶かな 県立尾道北高等学校一年 尾川 拓矢
【評】八月というと、広島は原爆で壊滅したことが大きい記憶である。原爆の傷は決して癒えないのである。
貝がらを耳にあてると海の音 大崎上島町立東野小学校三年 八崎うめの
【評】】感性に詩がある。海の音は空想に近いが、メルヘンの浜辺にいる気分。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
風薫る小石と気持ちが川を跳ね 呉工業高等専門学校一年 金谷賢志朗
台所西瓜を祖母が切り分ける 呉工業高等専門学校二年 田邊 雅人
梅干しは夏バテ防ぐ魔法の実 呉市立呉高等学校三年 小出 智香
いつからか目覚まし時計がせみの声 呉工業高等専門学校一年 黒崎 翔駿
無意識に日陰求める登下校 県立三原高等学校一年 田中 史織
葉桜にわずかに光る滴かな 庄原市立庄原中学校三年 K永 美咲
山びこがおーいと飛んでやって来た 三次市立甲奴中学校二年 福原  佳
春の海海女の潜りし和布わかめかな 庄原市立西城中学校三年 草岡 蒼汰
稲穂ゆれコロナ終息いつになる 福山市立松永中学校二年 尾上 遼匠
青光り湖面の鏡空うつす 福山市立城北中学校一年 藤原  司
夕影に一人たたずむ彼岸花 熊野町立熊野東中学校三年 木原 朱音
かしわもち季節伝える祖母の味 三次市立甲奴中学校一年 佐々木美里
海に行きさざ波の音ここち良い 廿日市市立佐方小学校六年 本山 恭輔
海開き押し寄せてくる人と波 並木学院福山高等学校一年 山本 千華
さくらんぼ双子のように並んでる 廿日市市立宮園小学校六年 平舛 菜月
しゃぼん玉おおきくふくらむ夢のよう 庄原市立庄原中学校三年  藤岡 美優
ふきのとう光をあびて笑ってる 県立三原高等学校二年 松浦 舞依
部屋の中そこにあるのは暑さだけ 広島市立砂谷中学校三年 西本 凪沙
汗かいた僕のかたには天道虫 福山市立城北中学校二年 坂井 澪緒

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
蔦茂る給水塔に被爆痕 広島市 野呂 天風
【評】給水塔は列車の機関車の給水のために主要駅にあった。空襲を受け、弾痕の塔に蔦が茂り、戦の現実の姿である。
繋船に古りし護符あり鳥渡る 廿日市市 平井 禮子
【評】廃船に近い船と思われるのは古い護符である。鳥帰るの季語の本意と捉えた句材の配合で船の姿が浮かぶ。
橋脚の残る水禍や曼珠沙華 廿日市市 辻  惠風
【評】水害で橋が流失し、川の中に橋脚だけ残っているのである。被災地に対し曼珠沙華の赤さは慰霊の花か。
船便となり朝摘みの水仙花 福山市 田村祐巳子
【評】始発の船便に託す水仙、そのためには早朝に荷造りをしなければならぬ。水仙の新鮮さが見える。
桃太郎の生まれさうなる桃を食ぶ 広島市 柿澤喜三郎
【評】相当に大きな桃と思われる。発想がおもしろい。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
町名も銭湯も消え虫の闇 呉市 松井英智子
介護車の夫を見送り大根干す 広島市 山田 雅子
なきがらは北の大地や墓洗ふ 安芸郡府中町 斉藤ハヤ子
廃屋にキネマポスター島は秋 広島市 下田あつ子
青葉闇抜けて遍路の衿正す 福山市 瀬尾ちとみ
人間魚雷つくりしドック秋の潮 広島市 田門 尚文
蜩や日本最古の芝居小屋 福山市 林 万理子
運休の鉄路錆浮き夏の蝶 広島市 坂川  巖
白南風や三歩で戻るかづら橋 広島市 村上としこ
青田風入れて魚焼く通し土間 福山市 市川 晴子
蘇がへる被爆ピアノや原爆忌 福山市 池上 幸子
鈍色の廃炉の鉄扉冬銀河 三次市 前原 俊五
枇杷咲くや島に一人の船大工 広島市 藤谷 知子
疫病に怖るる街の夏マスク 広島市 煙石  博
秋出水知らせる半鐘過疎の町 広島市 折田 英男
風鈴の音を聞きながら書く手紙 広島市 五藤 京子
初蝉を聞く送迎の車中かな 広島市 滋野アサコ
星月夜明日の棟上げ待つ木の香 呉市 植田トモ子
砂防ダム完成近し山粧ふ 広島市 川本三栄子
草虱付きたる喪服畳みけり 庄原市 河戸 靖子