けんみん文化祭ひろしま'20文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'20文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】香川哲三 選

【短歌】香川哲三 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
夏の海照らす太陽光る波遠くに続く水平線に 福山市立新市中央中学校二年 石井 未来
【評】夏の海の明るく爽やかな情景がよく伝わってくる。水平線とあるから朝だろう。下句がとてもいいし、調べも良い。
資料館うつむき見つめた床の色並ぶ写真に目をそらした日 県立尾道北高等学校一年 上田 虹日
【評】原爆資料館に入った時の作品だろう。若い作者の具体的な所作を通して、受けた衝撃が確かに伝わってくる。
午後10時グループ通話で待機中今年の花火は手のひらのなか 県立尾道北高等学校一年 下廣 遥斗
【評】コロナ禍により様々な行動が制限されたが、ここでは、オンラインで花火を楽しもうとしている。結句がとてもいい。
原稿を震える片手に携えてマイクに向かう静寂の時 県立広島皆実高等学校三年 齋木 古都
【評】人の前で何かの発表をしようとしているのだろう。その際の緊張感が第二句を中心にしっかりと伝わってくる。
まっすぐにおこめの赤ちゃんならんでる田うえのあとのきれいなけしき 庄原市立東小学校二年 平田  芹
【評】田植えをしたあとの早苗が並ぶ美しい様子がよく表されている。「まっすぐに」など素直な言葉づかいが楽しい。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
誰もいない試合会場眺めつつ負けた悔しさ今よみがえる 庄原市立西城中学校二年 麻田 涼華
夕暮れの浜辺に映る日の光僕らを照らす夏の思い出 県立三原高等学校二年 橋詰 怜治
目が覚めて一人眺める朝の空私一人のきれいな景色 三次市立甲奴中学校三年 森永 姫月
コロナ禍でどこにも行けぬ夏休み手帳まっ白これが思い出 県立三原高等学校二年 菊川 結香
めを閉じてみみを澄ませばどこからか夏のにおいと風鈴の音 福山市立福山中学校二年 岡本  和
コンクールコロナのせいで無いけれどあきらめはしない私の青春 廿日市市立野坂中学校二年 冨永 結依
久しぶり見覚えのある目元だが7割マスクで戸惑う私 県立広島国泰寺高等学校一年 池西 直翔
卒業前急な休校あと少し過ごしたかったなあの学年で 県立三原高等学校一年 藤本穂野香
コロナ禍でこれっぽっちの青春も消えてしまってすんなり卒業 呉市立呉高等学校三年 古森 ふき
いつもより十日短い夏休みコロナなければ楽しめた夏 呉市立呉高等学校三年 小松 朱美
紫の紫陽花の花咲き誇るいつも見てると落ち着く心 三次市立甲奴中学校二年 松山 将大
ほうかごのきょうしつの中ふたりきり君とのきょりは社会的きょり 福山市立駅家南中学校二年 森岡菜々子
夏休み夜空に星が打ち上がるパチンパチンとはじける笑顔 庄原市立比和小学校五年 石川 稜太
突然の外出自粛に窓を見る映る景色は静止画のよう 廿日市市立野坂中学校二年 伊藤 誉高
木のそばに一人ぽつんと耳すまし風に揺られて葉音楽しむ 三次市立川西小学校六年 井堀 心美
クーラーとスマホの電源つけたなら密かに始まる僕だけの夏 県立三原高等学校一年 簑田 智輝
また明日手を振る君の空高く一直線の飛行機雲が 庄原市立庄原中学校三年 藤岡 美優
目が合うと微笑み返す君がいてマスクの上5センチの恋 県立尾道北高等学校一年 竹内 咲貴
全国で広がっている感染症さよならぼくの中二の夏 廿日市市立野坂中学校二年 沖村  陸
疲れてる父にねだった肩車夕日がずっと近くに見えた 県立三原高等学校一年 淺井 未悠

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
衝立とフェイスシールドに阻まれて顔もおぼろな医師にもの言う 福山市 若林美知恵
【評】様々な困難を強いられているコロナ禍の、一断面が浮き彫りにされている。取分け下句に、作者の心情がつよく表れている 。
予後の身を奮ひ立たせて通ひたるプールに夫は背泳を見す 福山市 橋千恵子
【評】】言葉が的確に働いており、病から立ち直ろうとして努力している夫の姿と、夫婦の強い絆が滲み出ている。
チェンソーの音を谷中ひびかせて椎茸植えんとくぬぎを倒す 尾道市 橘和 政実
【評】椎茸栽培の原木を得るために櫟林に入った作者の姿、その場の光景が躍動している。特に二・三句が活きている。
今生の別れとならん病室に桜持ちきしやさしき娘 福山市 木坂 清子
上句から、作者の容易ならざる容体がうかがわれる。そのため下句の言葉が読者の心の奥深くまで届くのだろう。
汽水川に流れの淀む時ありてドーム人らの映るしづかさ 広島市 松村 常子
【評】潮の満ち引きにより刻々と姿を変えてゆく元安川のとある姿が、二・三句を中心に味わい深く表現されている。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
炎天下とれぬマスクにコロナ禍の先行き見えぬ不安のつづく 呉市 池田江梨子
接触を避けて会えない孫達とやっと逢えたりオンライン会話 庄原市 安川 博子
幾年を語り部として生きし母原爆ドームに面影の 広島市 櫛  詠水
水仙の匂う仏間の障子開けマスクのままに父の五十回忌 広島市 大東 敬子
被爆して逝きし人らを葬れる苑に差せる日こころにぞ沁む 広島市 石原 豊子
梅雨晴れ間心も少し明るみて午後は杏のジャムなど炊かん 広島市 安道 和子
亡き姉と語らう夢を告げやれば笑顔でいたかと母はたずねつ 広島市 藤井 良子
明日から面会禁止コロナ禍に入院の姉握る手強し 竹原市 入駒 智子
原爆の烈火に石も砕かれて墓石は今もあの日を語る 三次市 岡崎 明治
久々にカルチャー教室再開しマスクの中の笑顔なつかし 広島市 新田ユキ子
8・6を想えば哀し焼け野原リトルボーイという名忘れじ 広島市 吉川 徳子
限りある残余の時を愛おしみ一日一日を切に生きたし 三原市 村上 召三
われひとりの七十五回忌軍服の父と無言の会話続ける 尾道市 仲尾  修
教室を外から覗く人の群れコロナ禍避ける授業参観 庄原市 橘  京子
独り住む娘父の生日祝はんとコロナ禍の中弁当持ち来 福山市 杉之原壽美
天職と思い努めし教壇を去れば浮かび生徒らの顔々 三原市 上村 純治
定年後シルバー人材センターに出会いのありて二十年過ぐ 安芸高田市 実方久美江
住む人の絶えし故郷に響かする妻の横笛途切れ途切れに 広島市 中村  武
山里の強制疎開の日を思うコロナ蔓延るステイホームに 広島市 田辺 操子
一口の水の旨さに満たされて登り来し道ふりかえり見る 廿日市市 東 知佳子