けんみん文化祭ひろしま'21文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'21文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】石原豊子 選

【短歌】石原豊子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
亡き祖父の造りし縁台見るたびによみがえりしは我見る眼差し 広島市立三和中学校二年 森永 蒼生
【評】亡くなった祖父の手造りの縁台と、生前作者に向けてくれた優しい眼差しを重ね合わせた歌。読み手の心を打つ
「まかせたよ」つながるバトンと君の声十歩鼻先韋駄天の背あり 福山市立神辺東中学校二年 佐藤 響太
【評】リレー競技。バトンを受ける作者の緊張感と、「韋駄天の背あり」に漲る躍動感が読み手に伝わる。
今ここで七十六度目の鐘が鳴るけして忘るな葉月の悲劇 県立尾道北高等学校一年 吉原 颯斗
【評】被爆七十六年目の八月。記念式典で毎年鳴る「平和の鐘」。若き作者の平和への強い思いと決意が伝わる。
息を吐き大筆持って一画目白い世界を黒で彩る 呉市立呉高等学校一年 平岡 麗菜
【評】大きな白い紙に大筆の一画目を打ちこむ時の緊張感。さらに白と墨の黒との対比が描く臨場感が読み手に伝わる。
ちゃあちゃんとかわいくよぶよぼくのことしゃべりはじめたいもうと一さい 庄原市立東小学校二年 吉岡 俊哉
【評】お兄ちゃんを呼ぶ一才の妹の愛らしい表現。下の句の「しゃべりはじめた」の表現に兄の妹に対する愛を感ずる。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
三年前雨降り続き土石流民家を襲った忘れ得ぬ過去 県立広島皆実高等学校三年 新谷 晃生
夏来たり羽化して蝉は衣替え大合唱に命をかける 県立広島皆実高等学校三年 北野 優子
あと一球魂込めてボール投げ優勝旗手に取る友の笑み 東広島市立向陽中学校二年 尾形 晃明
メダル数感染者数増えていくニュース気になるこの夏休み 県立尾道北高等学校一年 宮下 心那
世の中にコロナウイルス散乱しにぎりつぶしたみんなのシアワセ 県立尾道北高等学校一年 桃谷 琴音
コロナ禍でみんな不慣れなオンライン改めて知る対面の良さ 県立三原高等学校二年 三木  悠
テニス部は架空の靴下履いてます日焼けの跡は努力の証 福山市立松永中学校二年 田頭 友里
明日こそ明日こそはと意気込んで昨日と変わらぬ今日過ごす夏 県立尾道北高等学校一年 藤本 道也
コロナ禍でどこにも行けない夏休みオリンピックで世界を知った 庄原市立東小学校六年 松尾怜衣紗
さみしいなきょうせんせいはおやすみだでっかいこえがきこえてこない 庄原市立高野小学校一年 萩原 美月
絶え間なく紙上を走るシャーペンの音のみ広がるテスト中かな 広島国際学院中学校二年 伊藤 將汰
秋の匂い霞む朝日とキンモクセイ吸いこんだものはいつかの思い出 県立三原高等学校二年 羽倉 早絢
コロナ禍で出られず気づくありがたさ人と集えた何処どこでもけた 福山市立新市中央中学校二年 池田 怜来
部活中疲れた体に沁みわたるはじけるラムネと君の笑顔が 県立広島皆実高等学校二年 幣田 夏帆
危機感が薄れた頃にやってくる怯えて過ごす豪雨のあの日 県立三原高等学校一年 石井 一輝
野呂山に自然の光さしこんで見上げた空に雲流れゆく 呉市立川尻中学校二年年 湊  祐輔
空もよう入道雲が雲の山そろそろ夏も終わりの季節 三次市立八次小学校五年 住田 蒼介
雷鳴と緊急警報鳴り響く夜中の3時安眠出来ず 県立三原高等学校一年 落合 陸斗
ステイホームふと顔よせる水そうにクロデメ金も顔よせてくる 庄原市立東小学校五年 田岡 千奈
とうさんと川で一ぴきつり上げたミミズをはりにさしてつれたよ 三次市立八次小学校二年 休束  歩

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
朝な夕な試歩ひたすらの冬耐えて妻は果樹園の陽だまりに立つ 尾道市 仲尾  修
【評】闘病の妻の病から立ち直ろうと努力している姿と、見守り支えている作者の慈愛に満ちた心情に心打たれる。
腕なき足一本を蹴りたてていきいき五〇ごじふ米泳ぎきりたり 広島市 松村 常子
【評】】パラリンピックでの水泳選手の躍動ある動きと、下の句の選手に対する作者の共感を表わす言い切りが小気味よい。
奥つ城の苔むす石の名は読めず空蝉強く抱きて煌めく 三次市 林  勝子
【評】一句から三句までの奥深い霊を祀ってある境域と、下の句の今を生きている現世との対比に作者の思いが籠もる。
合掌に並べしほだ木を割り出づる椎茸のつぼみの香りただよう 尾道市 橘和 政実
椎茸栽培のほだ木の準備。その準備中椎茸のかさが開く前の蕾の香が漂う。臨場感溢れる表現が活きている。
阿武山にひときわ大きく砂防ダム災害のあと夏の日に照る 広島市 山本 玲子
【評】土石流により甚大な災害のあった阿武山麓。二句の表現に被害の大きさと、結句の表現に被害への痛みがにじむ。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
広島のデルタの喉骨やけのこる原爆ドームわれの立つ場所 広島市 小野 系子
生き様の悲喜こもごもを火に焼べてわが旅立ちの憂い残さじ 三原市 大森 昭恵
車イスぶつかるごとにはね返しボール踊りて得点となす 安芸郡海田町 堀内 孝子
わが一日の音を集めし補聴器を労わりはずす夜の卓上 庄原市 川崎冨士子
コロナ禍でマスクで半分顔かくれ目と目で探る互いの表情 呉市 中西 時江
牛の背に我乗せ連れし春田打父なつかしきふる里荒るる 庄原市 永宗 敏昭
曲がる度電車は軋む広島の長き記憶の安らぐまでは 広島市 加土 道子
杖の老女に姑の気憶がかえりくるそっと手をかすこの手の温さ 広島市 櫛  詠水
誉められてまた誉められてスケボーを幼は空をものともせずに 福山市 橋 泰子
長年の介護で尽し母親の終の行き顔やすらかに見ゆ 尾道市 嶽  斉幸
早朝の綺麗な風もマスク越し挨拶もない散歩のかたち 広島市 小坂  修
若き時酒呑むたびに荒れてゐた父の苦悩の深き闇とは 三原市 上村 純治
二千度の原爆熱に打ち破れし墓石の上に黒き雨降る 三次市 岡崎 明治
立葵日び咲きのぼり死の近き母の命と重なりて見ゆ 庄原市 奥井 久子
泳げねど海はたのしく描かれをり障害の子の夏の絵日記 福山市 林 スミ子
緑うすき新芽を見定め蜜柑木に鋏入れゆく黄の果を描き 尾道市 川口 靖文
氏素性添へて無花果店頭の街に号外首相退陣 呉市 丹窒みこ
廃校の跡の更地に小さき碑敷地寄付者の名前留めてに 安芸郡府中町 石橋 康徳
大雨に山の傾りの崩れたり月見草咲く清らなる崖 三原市 桝宗 範子
雨あがり静まりかえる境内に木漏れ日さして蝉鳴き出だす 呉市 中野亜紗子