一つの真実

広島大学附属高等学校一年

「迷惑だった?」
いつもの安心をくれる言葉を待った
「いつものことだよ。」
身を切られるような言葉だった
「どうせ。これが私ですよ。」
慟哭の衝動を飲み込んで舌を出す
ねぇ もし正直者だったら
問いつめて絞め殺してたかな

「これ教えてくれる?」
いつもの繋がれる言葉を待った
「自分の頭で考えなよ。」
離れる言葉だった
「はいはい。馬鹿なりに頑張るよ。」
真っ赤な顔を逸らせて口をとがらせる
ねぇ もし強情だったら
駄駄を捏ねて押し潰してたかな

「また会える?」
いつもの次を約束する言葉を待った
「ごめん。もう無理。」
終わりを告げる言葉だった
「うん。分かった。じゃあね。」
手の震えを押さえて精一杯の笑顔を作る
ねぇ もし勇気があったら
抱きしめて壊してたのかな

もし たった一つの言葉を言えてたら
正直者でも強情でも勇気があっても
良かったのかな
恋も愛も分からなくても確実な
「側に居たい。」の言葉さえ

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