【個人の部】
イタイミナコ 氏(美術/地域文化)(広島市)
広島市在住、31 歳。広島市立大学大学院芸術学研究科博士後期課程在籍、美術作家/アート・メディエーター。
博士前期課程修了後、美術家として活動を開始し、2022年から1年間、文化庁事業「広島芸術都市ハイヴ」の職員を務め、アート・メディエーターとして、みしまART ログ、一般社団法人オルタナティブスペースコア、宮島芸術祭実行委員会で活動。
2019年に広島市営基町高層アパートに学生で特例入居後、「基町文化研」と銘打ち、多世代、多国籍の住民が集う基町の住民から地域に関わる話を記録・伝承する取り組みを始める。現在は自治会長を務め、地区内アートスペースの運営や、大学や行政のプロジェクトと連携し、県内外から訪れる研究者・学生に地域の文化的背景を解説・案内する役割を担う。
こうした地域の固有の文化を掘り下げ、向き合う独自の活動を各地で立ち上げ、憑依を技法として取り入れながら、パフォーマンスや映像を媒体とする表現活動を精力的に行っている。多くの地域住民との関わりあいから生まれる領域横断的な創造活動は、地域へ果たす効果として国内でも類を見ない。
〈受賞コメント〉
このたびは令和7年度広島文化新人賞という栄誉を賜り、感謝申し上げます。
支えてくださった皆様とともに、広島から文化の灯を広げてまいります。いただいた評価に恥じぬよう、表現を通じて還元してまいります。
尾身 大輔 氏(美術−彫刻)(三原市)
三原市在住、33歳。広島市立大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻彫刻研究博士前期課程修了、同大学非常勤助教を経て、2023年から三原市小佐木島の公益財団法人ポエック里海財団文化芸術担当及び里海環境保護担当として活動。
作品は、主に昆虫や甲殻類などの生物を巨大化させた木彫であり、神話・宗教・民俗伝承から見た「人と自然との関わり」をテーマに木彫の技法を用いて表現し、鑑賞空間そのものを変容させ、その世界観を見るものに直接的に体験させる表現技法が評価されている。
県内医療法人による「清風会芸術奨励作品展」芸術奨励賞、「広島市立大学卒業・修了作品展」優秀賞を受賞。個展「空想と虫籠」や小豆島の三都半島アートプロジェクトや瀬戸内国際芸術祭など県内外でのグループ展を発表の場とし、大型の木彫作品は国内外からの来場者の人気を博した。三原市小佐木島に移住後は、財団保有のアートギャラリーの運営・管理、及び島内環境の整備に従事し、5人目の島民として地域の発展、芸術資源の保全、芸術による社会教育に取り組んでいる。
今後も小佐木島での活動を継続し、将来的には、個展の開催、作品の島内設置による地域の活性化を目指している。
〈受賞コメント〉
この度は新人賞に選出していただき、心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みにして、自身の創作活動を続けていきたいと存じます。自身のための活動が、結果的に誰かのために繋がっていたなら幸いです。
神田 妙美 氏(美術−日本画)(福山市)
福山市在住、37歳。尾道市立大学大学院美術研究科(日本画)修了。大学卒業後から各種の絵画教室の講師を務める。
学生時代は尾道のノスタルジーな風景を中心に風景画(日本画)を制作。近年は広島出身として、平和のための異文化理解の重要性を感じ、旅先の風景をテーマに歴史的背景を調べ、自身の身近に感じたモチーフと重ねて1つの作品への融和を求めて描いている。
日本画公募の院展を主な発表の場として、グループ展などで活動し、春の院展では11回、再興院展(秋)では8回、合計19回の入選を果たし、再興第110回院展では「奨励賞」を受賞。日本画の登竜門として知られる「臥竜日本画大賞展」入選、日本画若手作家による研究発表展「有芽の会」法務大臣賞受賞。
講師を務める日本画教室では尾道市だけでなく三原市、福山市、府中市から集う幅広い世代との交流で技術を高め合うほか、県立三原高校の記念絵画修復にも携わっている。
個展やアートプロジェクトに継続的に参加し、地元広島をはじめ東京など全国で精力的に活動中。
〈受賞コメント〉
このような栄誉ある賞を頂戴し大変光栄に存じます。
沢山の方のご支援があったからこそ今日まで制作を続けることができました。
感謝とともにより一層精進して参ります。この度は誠にありがとうございました。
児玉 香織 氏(美術−現代美術)(尾道市)
東広島市在住、39歳。美術家。尾道市立大学芸術文化学部美術学科卒業後、美術家として活動しながら、保育園や幼稚園などで造形指導を始める。
料理や食材をモチーフに青いキャンバスや方眼紙に線を描く作品を制作。作家の感情やモチーフのイメージではない、線が作るかたちを追及する独自の表現スタイルを持つ。
県内外で個展・グループ展を開催する中、多くの現代アート作家を輩出したギャラリー「ラディウム・レントゲンヴェルケ」で注目を集めた。また、著名な現代美術コレクターによる「高橋コレクション」や「ヒロセコレクション」にも作品が収蔵され、今後の活躍が期待されている。
県内ギャラリーが行う児童対象のオンライン造形ワークショップの講師を務めるほか、尾道市立大学で大学院生を対象としたレクチャーも行うなど、地域貢献や後進育成にも取り組んでいる。
〈受賞コメント〉
この度は栄誉ある文化新人賞を賜り、心より御礼申し上げます。
支えてくださった皆様のお力添えに感謝し、今後も創作に真摯に向き合い努めてまいります。
前田 由芽 氏(美術−日本画)(広島市)
広島市在住、43歳。美術家。広島市立大学大学院芸術学研究科博士後期課程総合造形芸術専攻満期退学後、美術家として活動を始め、県内の中・高等学校、比治山短期大学部美術科で非常勤講師、広島市立大学芸術学部で非常勤助教を務める。
使用する和紙に植物染料で染め付けする手法で、紙の風合いを生かしながら作品の優しい表情につなげる従来にない表現方法が高く評価されている。
2009年以降欠かさず「創画展」に出品し継続的に入選を果たし、2009年「奨励賞」、2024年、2025年「東京春季展賞」を受賞。また広島信用金庫日本画奨励賞を2025年に受賞している。
地域のワークショップで講師を務めるなど地域貢献に積極的に取り組むほか、広島市立大学での学生指導を通じた後進育成にも尽力している。
〈受賞コメント〉
この度は栄誉ある賞を賜り心より感謝申し上げます。創作できる喜びを抱き今後も豊かに描いて生きていきながら、今後も広島の文化発展に貢献できるよう努めてまいりたいと思います。