けんみん文化祭ひろしま'18文芸祭
トップページ けんみん文化祭ひろしま'18文芸祭 文芸祭 入賞・入選作品発表 【短歌】上條節子 選

【短歌】上條節子 選


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小・中・高校生の部【特選】

作品 学校名 お名前
春の朝大人運賃にぎりしめ二百円ぶん背伸びして待つ 県立広島中学校二年 三宅 結衣
【評】この春からは大人運賃の中学生。少しずつ大人の立場になる緊張感、清々しい覚悟と希望が伝わってくる。
気合い入れひもを結んだスパイクで青空の下バトンをつなぐ 県立三原高等学校一年 新谷 美空
【評】仲間との連帯、緊張の瞬間、意気込みが伝わる。歌の中にこの日まで積み重ねた日々の時間の豊かさをも感じる。
じりじりと肌に暑さを感じつつ泥に埋もれた思い出探す 県立三原高等学校三年 三井 彩加
【評】七月の記録的豪雨では県内各地で痛ましい事が起った。猛暑の中、泥を除きながらのやりきれない気持ちを思う。
弟が手じゅつをするため病院へ姉弟げんかはちょっとおあずけ 庄原市立東小学校三年 岩ア  湊
【評】兄弟は喧嘩しながら育つ。下の句に弟を心配し、思いやるお姉さんのやさしい気持ちがよく現われている。
かさみたいでっかいふきをさしたんだあめがつうっとすべっていった 庄原市立比和小学校一年 松島 綾花
【評】おおきなふきをさしてたのしかったでしょうね。ふきのはをあめがすべっていくようすがめにみえるようです。

小・中・高校生の部【入選】

作品 学校名 お名前
猛暑日のグラウンド走る君の背にエールがわりの発声練習 広島市立三和中学校二年 渡邉美緒栞
災害で中止になった盆踊り眠り続ける箪笥の浴衣 県立総合技術高等学校二年 盛谷 愛里
目隠しし右へ左へ棒をふる外野の声にだまされる君 県立総合技術高等学校一年 保手濱成美
イラストで平成最後の思い出を入道雲に描き残しおく 清水ヶ丘高等学校三年 小原 真衣
暑い夏食卓ならぶ手抜き飯それでもうまい浅づけきゅうり 県立三原高等学校一年 藤本 夏寧
流れたよ家族みんなで大さわぎお盆の夜の流星観測 銀河学院高等学校一年 三村 菜摘
カチカチと時計だけが話してるいつまで私は受験生なの 呉市立呉高等学校三年 河野莉乃亜
精神を研ぎ澄まし聞く決まり字を何が何でも取ってやりたい 呉市立呉高等学校一年  萌々花
目の中でピンクが泳ぐなんなのかいつでもきれいな桜だったか 庄原市立高野中学校二年 白根  颯
この街で初めての春を歩いてく不安を隠して見上げる桜 県立総合技術高等学校三年 松枝 恵華
春風にふかれ散りゆく八重桜まだ眠る芽に次はお前だと 庄原市立西城中学校二年 福留 姫月
塾の席鶏舎のように仕切る壁卯月の空へ羽撃く日まで 県立府中高等学校二年 石井 大智
横断歩道白だけ踏んで笑われる子どもの影は薄れ見えない 県立三原高等学校一年 向畑 智実
ありたちもソフトクリーム大すきだ早くおちてこいあまいしずく 庄原市立東小学校二年 栗原 宏弥
品評会いっしょに出たよぼくと牛あっと思うとふんふんじゃった 庄原市立口北小学校三年 山岡 大起
少しでも役に立ちたく参加した家族みんなでボランティア活動 銀河学院高等学校二年 田中  華
何一つ思いつかずに過ぎてゆくオレの心は明日の通り雨 銀河学院高等学校二年 池田 正洋
オリーブの木八月の空へ手を伸ばす響く静かな誰かの祈り 銀河学院高等学校二年 中山 菜々
広島の緑の山の川の底大山椒魚今日もくつろぐ 県立総合技術高等学校一年 釜本 剛志
流燈の横手を走るこどもかな流れ流れる戦争の記憶 県立尾道北高等学校一年 新田 樹生

一般の部【特選】

作品 地域 お名前
なきがらを踏みく心地す八月の縮景園の水際みぎは歩めば 広島市 小野 系子
【評】原爆投下直後、縮景園には夥しい人が押し寄せ亡くなった。この地を踏む申し訳なさ、敬虔な思いに共感できる。
線路の土砂撤去されたり再開の一番列車わが前を過ぐ 安芸郡海田町 堀内 孝子
【評】七月の記録的豪雨により県内の交通網も寸断された。再びを列車が走る感慨が一首から伝わってくる。
やがてそら真青なり膵癌と仲良く秋の野に歩をためす 尾道市 藤田 久美
【評】秋の野の美しいけれどさびしい風景に作者の心情が重なる。重い現実だが作者の凛とした覚悟が感じられる。
立葵見れば戦後のバラックの校舎ひとつを思い出すなり 広島市 吉川 徳子
【評】今はないバラックの校舎、そこに咲いていた立葵、懐しい景色や風の匂いまで感じさせひとつの時代が蘇る。
いくたびも銀のしをりを食ませたりあなたの声を待ちゐるあひだ 広島市 熊谷  純
【評】あなたの声」を待つ間のそわそわした気持ちと「銀のしをり」の取合せがいい。言葉の扱いも巧みだと思う。

一般の部【入選】

作品 地域 お名前
豪雨被害広がり心騒ぎつつ母にいつものインシュリン打つ 呉市 佐々木節子
病院の外の蝉にも身構える真理まこと虚構うそも見抜けぬぼくは 広島市 夏目案山子
進行癌の不安消すにや夜のふけて夫は牧水を低唱しおり 三原市 岡村 光里
熊蜂のように二日を働いて息子帰りぬ後の長雨 尾道市 山崎 尚美
ささやかな宮島の旅アメリカの若い夫婦に席譲られる 広島市 玉本祈世夫
夕焼けをどこまで連れて行くのだろう七月尽の列車の窓は 広島市 小尻カズ子
松手入れの男空より降りてくる広げた空にうなずきながら 広島市 岩本 幸久
鬼遣らい吾が歳ほどの豆残し三日かかりて春を噛みしむ 広島市 野島 桂子
平成の最後の夏も終戦を凌ぎし昭和の記憶は失せず 三次市 林  勝子
大正の校舎がついに崩される遥か遠くの山並かわらず 庄原市 市川美南子
老齢を生きる途中の幻肢痛土に着きたる一本の脚 福山市 大塚 文枝
手作りの風鈴おちこちかかりゐて夏の終りの竹原をゆく 広島市 清水 勝子
リフォームをと思えど今年もまた仕舞う夫の身丈の大島紬 福山市 田中 桂子
今少し生きて五輪をんというリハビリに励む卒寿の夫は 広島市 田原 正子
うたごころしきりに湧きて楽しき日病忘れて歌に遊べる 広島市 井上 宝護
歳ふれど共に学べるありてしたしく仰ぐひろしまの空 広島市 中川多鶴子
半月の影淡き道もどり来ぬおさらいの手話くりかえしつつ 庄原市 山本 照子
真夜覚めて胸の奥処に棲みつきし虫がかりかり食む音のせり 広島市 出原 知恵
「目ざめたらお食べ」と妻に書き置いて果樹園予防の噴霧器背負う 尾道市 仲尾  修
社への道のぼりゆく早朝のぬれに冬の月残る見ゆ 呉市 福庭加恵子